第23回 日本流通学会賞・第10回 日本流通学会論文賞
学会賞
該当作なし
学会奨励賞
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仲上 哲 著『格差拡大と日本の流通』(文理閣、2019年2月発行)3000円
仲上 哲 著『格差拡大と日本の流通』(文理閣、2019年2月発行)3000円
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受賞の理由
本書は、格差社会という現代資本主義社会に対する認識をベースにしながら、我が国の流通のあり方を分析し将来展望を示したスケールの大きな業績である。特に、小売業をめぐる競争環境の変容がもたらす新しい小売業の可能性に着目した点は高く評価される。より具体的には小売業の公益性という流通の社会的役割の側面に焦点を当て、コンビニエンスストアや移動販売などの具体的小売業について検討しその限界についても明らかにしている。
 ただ、本書のテーマである格差拡大と筆者が主張する独占資本主義とがどのような関係にあるのか、より現代的な資本主義の様相を踏まえた展開が欲しかった。
 以上のことから、今後の研究のさらなる発展を願って,本書を第23回日本流通学会・奨励賞を授与することとした。
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川口 高弘 著『価値共創時代におけるマーケティングの可能性-消費と生産の新たな関係-』(ミネルヴァ書房、2018年7月発行)5000円
川口 高弘 著『価値共創時代におけるマーケティングの可能性-消費と生産の新たな関係-』(ミネルヴァ書房、2018年7月発行)5000円
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受賞の理由
本書は、これまでマーケティング論で用いられてきた多くの「価値概念」に着目し、それぞれを分析した労作である。結果的に、文脈価値、使用価値、快楽価値、経験価値、文化的使用価値などの分析を通して、近年の主要なマーケティング論のテーマに接近することになっている。価値概念にこだわったことで現代マーケティングの論争点に接近していることは高く評価される。筆者は最終的に消費者とマーケティングの共創による文化的使用価値の顕在化を明らかにしている。
 ただ、各章の記述が短いこともあり、議論の方向性や抽象化のレベルが異なる概念を十分に論じきっているとは言い難い部分も残されている。
 以上から、今後の研究のより一層の発展を期待して、本書を第23回日本流通学会・奨励賞とすることで結論を得た。
論文賞
該当作なし