本書は、格差社会という現代資本主義社会に対する認識をベースにしながら、我が国の流通のあり方を分析し将来展望を示したスケールの大きな業績である。特に、小売業をめぐる競争環境の変容がもたらす新しい小売業の可能性に着目した点は高く評価される。より具体的には小売業の公益性という流通の社会的役割の側面に焦点を当て、コンビニエンスストアや移動販売などの具体的小売業について検討しその限界についても明らかにしている。
ただ、本書のテーマである格差拡大と筆者が主張する独占資本主義とがどのような関係にあるのか、より現代的な資本主義の様相を踏まえた展開が欲しかった。
以上のことから、今後の研究のさらなる発展を願って,本書を第23回日本流通学会・奨励賞を授与することとした。
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