会長挨拶
このたび、日本流通学会の第14期会長を務めることとなった立命館大学の木下明浩と申します。
本学会は、1987年11月に創立され、流通・商業・マーケティングという分野だけでなく、農林水産物流通や流通政策・経済法、物流・情報、サービス、消費者問題・協同組合、貿易・国際流通など広範な研究分野を併せ持つ学際的な研究組織として発展してきました。創立当初は、日米貿易摩擦の中、1989-90年日米構造協議がなされ、農産物など一次産品の関税や大規模小売店舗法など非関税障壁にかかわり日本の市場開放が迫られるなど、政治的課題と切り結んで流通政策や流通構造が、商流・物流・情報流の多面的な領域で研究されてきました。
2024年現在、本学会はいくつかの課題に直面しています。ひとつは会員数をより拡大していくことです。流通研究は、2021~2023年の全国大会統一論題テーマを見ても、「ポスト・パンデミックの流通と消費」「日本の流通業における DX 推進に向けた新たな視座」「質的・量的流通研究の新たな進展」と広範囲に及ぶものであり、研究しがいのあるテーマが提起されています。多くの研究者、実務家、院生が本学会に関わっていただくように、会員数の拡大に向けて周りに働きかけていきたいと考えております。
研究の国際交流を進めていく課題もあります。全国大会や部会にて、海外の研究者の発表や国際共同研究の発表を持つ機会を増やし、流通の進化と諸課題に応える研究を進めていく必要があります。
そして部会活動の活性化も取り組むべき課題です。少子高齢化の影響は地方により厳しく表れるなか、北海道・東北、関東甲信越、中部、関西中四国、九州の5部会それぞれにおいて研究活動をさらに活性化する意義が高まっています。部会研究会は、比較的少人数で、専門分野、年齢、所属などが多彩な研究者がじっくりと議論し、交流する貴重な機会であり、今後とも大事に育てていきます。
今日、ウクライナ戦争、中東における戦争、経済のデカップリング、生成AIの登場など、新型コロナウイルス流行後も世界の政治と経済が激変するなか、流通部面でも実にさまざまな問題が生起し、私達の生活全般に影響を与えています。本学会でも、会員個々人による研究と研究大会、各部会などを利用した学際的な研究を活発に展開し、理論、実証の両面から現実世界に貢献していきたいと考えております。流通問題に関心のあるみなさん、一緒に研究し、議論いたしましょう。
日本流通学会 
会長 木下 明浩(立命館大学)