第22回 日本流通学会賞・第9回 日本流通学会論文賞
学会賞
該当作なし
学会奨励賞
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天野 恵美子『子ども消費者へのマーケティング戦略-熾烈化する子どもビジネスにおける自制と規制』(ミネルヴァ書房, 2017年3月発行)4500円
天野 恵美子『子ども消費者へのマーケティング戦略-熾烈化する子どもビジネスにおける自制と規制』(ミネルヴァ書房, 2017年3月発行)4500円
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受賞の理由
本書は, 米国における子供向けマーケティングの成立と展開、子供向けマーケティングが抱える課題とマーケティングの変化を米国の食品・飲料企業のマーケティング事例に即して、理論と実践の両面からの解明を目指した業績である。
 子供の消費と子供に対するマーケティングが内包する課題を明らかにするために、米国や国際的な動向について多数の資料に基づき整理し、子供向けマーケティングの方向性を示すことを試みている。流通・マーケティングについて社会的視点で考察する姿勢は、今後の学会の一つの方向性を示したものとして高く評価できる。
 ただ,本書は、1本の著作としての完成度が十分ではない点や、既存のマーケティング理論との関係性が明確ではない点など、今後さらに発展する余地を残した作品である。以上のことから,今後の研究のさらなる発展を期待して,第22回日本流通学会・奨励賞を授与することとした。
論文賞
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日隈 美朱「水産加工産業における流通機構の進展-戦前・戦後における海苔共販の成立・定着過程-」日本流通学会誌『流通』第41号所収
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受賞の理由
本論文は、20世紀初頭から1950年代までを中心に共販組織の事例研究を行った優れた研究成果である。歴史的な資料に基づく詳細な実態把握に基づいて水産加工品であるノリの流通機構の展開過程を明らかにしている。生産者と産地商人との単純な利害対立を前提とした通説的な理解に批判を加え、初期共販制度の成立や改良型共販制度への展開という歴史的プロセスを解明し、先行研究に新たな知見を付け加えることに成功している労作である。
 一部理論的視座の提示などにおいて不十分性もあるものの、今後の発展に大いに期待できる成果であるとの結論を得た。以上から、第9回日本流通学会論文賞を授与することとした。