第18回 日本流通学会賞・第5回 日本流通学会論文賞
学会賞
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Kazuo Usui, Marketing and Consumption in Modern Japan, Routledge, 2014 $160.00
Kazuo Usui, Marketing and Consumption in Modern Japan, Routledge, 2014 $160.00
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受賞の理由
日本の近代化に流通業が果たした役割について、海外に紹介した文献である。日常生活や文化様式の西欧化・近代化に、日本の系列店展開方式が一定の効果を上げたことについて、食品、化粧品、衣料品、電化製品などを採り上げ、事実関係を踏まえて解説している。これらは研究としてはある程度知られた内容であるが、一貫した視点からの丹念な叙述であり、また豊富な資料と写真入りの読みやすい解説・紹介本になっている。
 著者の長年の研究成果を示した好著であるとともに英文の日本マーケティング史として英語圏では貴重であろう。以上から、本書は学会賞に相当すると思われる。
学会奨励賞
該当作なし
論文賞
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吉村純一(熊本学園大学)「現代マーケティングにおけるカルチュラル・ブランディングの位置-ブランド戦略における歴史性をめぐって-」日本流通学会誌『流通』第33号所収
吉村純一(熊本学園大学)「現代マーケティングにおけるカルチュラル・ブランディングの位置-ブランド戦略における歴史性をめぐって-」日本流通学会誌『流通』第33号所収
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受賞の理由
現代社会におけるブランド戦略の理解と展開のためには、カルチュラル・ブランディングの役割と機能の分析が欠かせないとする筆者の問題意識は評価できる。ブランド論には様々なものがあるが、筆者の「ブランド戦略と社会経済的な歴史的文脈」の「密接な関連の中でブランディングの位置を解明することが求められている」と言う主張は、重要である。
 本稿は、カルチュラル・ブランディングというブランド戦略の事例研究と、ブランド戦略の二類型による理論的な考察を行っているが、問題意識、論文の質ともに、豊富な文献や論争を検討したあとがうかがわれる良質の論文となっている。