第17回 日本流通学会賞・第4回 日本流通学会論文賞
学会賞
●
小原博『アメリカ・マーケティングの生成』中央経済社、2012年9月刊行、3,780円
小原博『アメリカ・マーケティングの生成』中央経済社、2012年9月刊行、3,780円
◆
受賞の理由
本書は、現代マーケティングの基盤が、19世紀後半から20世紀初頭のアメリカ企業の発展のうちに形成されてきたことを論じたものである。典型的なマーケティングの生成を考察するうえで取り上げなければならない先駆的企業としてシンガー社を取り上げ、直営販売支店による流通チャネルの構築、セールスマンの拡充・強化、製品面の改良・革新等をすすめてきた活動を分析していることは説得力をもつ内容となっている。
 個別企業の発展という生きた素材の分析によってマーケティングのエッセンスが形成されてきたことを鮮明に取り出すという著者の「発生史的な分析手法」も興味深く好適な接近法と思われる。
 この分野における著者の研究蓄積を活かして、他企業、他産業のマーケティング活動との関連・比較、ないしマーケティングの本質の理解に関わる知見などが付け加えられることへの期待も大きい。
学会奨励賞
●
川端庸子『小売業の国際電子商品調達』同文舘出版、2012年9月刊行、3,990円
川端庸子『小売業の国際電子商品調達』同文舘出版、2012年9月刊行、3,990円
◆
受賞の理由
本書は主に、小売業国際化についての理論的考察から国際商品調達を重視し、近年の国際電子商品調達に注目して実証分析を行ったものである。
 第Ⅰ部の小売業国際化研究では先行研究のサーベイを行ったうえで、小売業国際化行動において商品調達の重要性を指摘し、それが小売業の競争優位に深くかかわっていることを明確化している点は手際がよく評価できるものとなっている。
 第Ⅱ部の国際電子商品調達の実証研究においては、ウォルマートのリテールリンク、競合企業のアジェントリクスを主に取り上げ、企業間取引の電子化の分析を行っている。情報ネットワーク化が流通構造に及ぼす具体的なインパクトの研究として先駆的かつ意欲的なものとなっている。さらに、企業間取引の国際ネットワーク化として標準EDIやEDIFACTとの立体的な関係の考察も期待できる。
論文賞
該当作なし