本書は、現代マーケティングの基盤が、19世紀後半から20世紀初頭のアメリカ企業の発展のうちに形成されてきたことを論じたものである。典型的なマーケティングの生成を考察するうえで取り上げなければならない先駆的企業としてシンガー社を取り上げ、直営販売支店による流通チャネルの構築、セールスマンの拡充・強化、製品面の改良・革新等をすすめてきた活動を分析していることは説得力をもつ内容となっている。
個別企業の発展という生きた素材の分析によってマーケティングのエッセンスが形成されてきたことを鮮明に取り出すという著者の「発生史的な分析手法」も興味深く好適な接近法と思われる。
この分野における著者の研究蓄積を活かして、他企業、他産業のマーケティング活動との関連・比較、ないしマーケティングの本質の理解に関わる知見などが付け加えられることへの期待も大きい。
|