第二次世界大戦後、日本が高度経済成長を実現するプロセスで、総合商社が資 源調達システムとして重要な位置を占める様になったことを、鉄鉱石にスポットを当てて解明している。また、そのような日本的資源調達システムの特性をアメリカ、中国、韓国との比較において考察し、資源ビジネスとして優位性の根拠を総合商社の総合性に着目している点は、実証的でありながら理論的な志向性をももつ魅力的な研究となっている。さらに、総合商社のビジネスモデルにとって六大企業集団の枠組みがどのような意義を持っていたのかを検討し、「六大企業集団は融合・収斂ではなく、無機能化に向かっている」と結論するなど、極めて興味深い知見が提出されている。全体に、このような分析・考察は各種統計データや社史に基づいて綿密に行われており、すぐれた研究書となっている。
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