本著書は,1980年代以降の日本における「小零細小売業の激減過程のメカニズムを明らかにしようとした」(はしがき)ものである。まず,理論的な学説整理に着手し,小零細小売業の活動と利潤を資本概念で捉え,「どのような目的で貨幣を投入」(はしがき)するかという「経営目的」に着目した。このような方法で,東京都町田市の商店会と神奈川県相模原市の商店会の実態調査をおこない,小売減少の主たる要因を,経営者の高齢化と経営意欲の消失・後継者不足に求めている。さらにフランスの小売業政策との比較も検討され,学説の整理と仮説を立てての経営実態に即した着実な実証の手法は秀逸であり,日本流通学会賞に値するとの結論に達した。
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