学会賞(JSDS)

第12回 日本流通学会賞

清水真志 『商業資本論の射程---商業資本論の展開と市場機構論』ナカニシヤ出版、
2006年4月28日刊行、3900円


受賞の理由 :
本著書は,従来の経済原論研究において難問のひとつになっていた商業資本論を,利潤率均等化をめぐる市場機構の基軸の位置に据え直して,産業資本が商業資本に対して自らの流通過程を一定期間・専業的に委譲する<期間契約的な委譲>をなすことを問題提起し,もって貨幣市場機構や資本市場機構全体と商業資本の関係性を理論的に構築するパイオニア的研究成果を含むものである。よって,学会賞選考委員会は日本流通学会賞に値すると結論した。

渦原実男 『日米流通業のマーケティング革新』同文舘出版、
2007年4月5日刊行、3900円


受賞の理由 :
  本著書は,「流通のグローバル化と情報化が同時に進展して,国際的な相互依存関係が非常に高まっている」(はしがき)時代が現代の特色であると把握した上で,日本型の流通モデルを「官僚主導型混合経済体制」と規定し,これとの対比で,米国型のマーケティング・イノベーションの典型としてウォルマート社やシアーズ社の小売業態を徹底的に研究し,日米流通比較研究の先鞭をつけた。よって,学会賞選考委員会は日本流通学会賞に値すると結論した。

李 東勲 『経営目的から見る小零細小売業の課題』専修大学出版会、
2007年2月20日刊行、3570円


受賞の理由 :
  本著書は,1980年代以降の日本における「小零細小売業の激減過程のメカニズムを明らかにしようとした」(はしがき)ものである。まず,理論的な学説整理に着手し,小零細小売業の活動と利潤を資本概念で捉え,「どのような目的で貨幣を投入」(はしがき)するかという「経営目的」に着目した。このような方法で,東京都町田市の商店会と神奈川県相模原市の商店会の実態調査をおこない,小売減少の主たる要因を,経営者の高齢化と経営意欲の消失・後継者不足に求めている。さらにフランスの小売業政策との比較も検討され,学説の整理と仮説を立てての経営実態に即した着実な実証の手法は秀逸であり,日本流通学会賞に値するとの結論に達した。

平山 弘 『ブランド価値の創造---情報価値と経験価値の観点から』晃洋書房、
2007年2月20日刊行、3150円


受賞の理由 :
  本著書は,ブランドの持つ価値とは何かについて深く研究した理論と実証の研究業績である。まず,ブランドの語源から解明し,次いで,ブランド価値を「情報価値」と「経験価値」に分けて,情報伝達手段としてのブランド,使用した経験による満足度を経験価値として伝達するブランドの両面を従来の研究成果を整理しつつ指摘する。さらに,どのような場合にブランドが成立するのか,あるいは,たんなるコモディティになるのかを,ホテルとラグジュアリ・ブランドの例で証明する。価値とは人間に満足をもたらすものという視覚で一貫しており,ブランドの理論領域を開拓したとして,今後のさらなる研究への期待を込めて,日本流通学会奨励賞に値するとの結論で一致した。